自己募集型デジタル社債という新たな資金調達手段を実際に活用し、成果を上げている企業は、どのような考えのもとで導入を決断したのでしょうか。
本記事では、ダイバーの聖地・大瀬崎で宿泊施設を運営する「ネイチャーイン大瀬館株式会社」を取材し、資金調達手段として自己募集型デジタル社債を選択した理由や、発行を通じて得られた手応えまでを詳しく伺いました。
同社は、不動産価値創造事業を手がける株式会社レーサムが完全子会社化した上で、親会社であるレーサムの保証を付したスキームを採用し、2025年1月と10月の2回にわたり、自己募集によるデジタル社債を発行。「事業への共感」「ファンの応援」を軸にした資金調達に挑戦してきました。
本記事では、従来の資金調達との違いや、企業が主体となって投資家と向き合う自己募集型デジタル社債の可能性を、実例を通じて紐解いていきます。
今回お話を伺った方

金澤 彬 様 |ネイチャーイン大瀬館株式会社(株式会社レーサム 執行役員)
千葉 健司 様|ネイチャーイン大瀬館株式会社(株式会社レーサム 未来事業本部 課長)
宮島 友香 様|ネイチャーイン大瀬館株式会社(株式会社レーサム 広報室 課長)
事業紹介 ― 圧倒的な自然と「ダイバーの聖地」を守り、次世代へつなぐ
Q:まずは、ネイチャーイン大瀬館がどのような施設なのか教えてください。
ネイチャーイン大瀬館は、静岡県・西伊豆に位置する、ダイビングをメインとしたマリンショップ併設型の宿泊施設です。一般的な旅館というより、「ダイバーのための拠点」に近い施設で、日帰りのお客様も非常に多いのが特徴です。
大瀬崎の魅力は、目の前に駿河湾、対岸には富士山があるという圧倒的な自然環境です。駿河湾は日本一深いと言われていますし、富士山との高低差で言うと6,000m近くある。水質は「日本で最も良い海水浴場」に選ばれるほど美しく、豊かな植生からジオパークにも認定されています。都会から来られる方にとっては、時間を忘れてゆっくりと過ごせる、最高のデトックス空間だと思います。

画像1 ネイチャーイン大瀬館外観

画像2 大瀬崎でのダイビングの様子

Q:大瀬崎という地域に対して、どのような想いを持って運営されているのでしょうか?
大瀬崎という地域は、西伊豆を代表する「ダイビングのメッカ」です。ネイチャーイン大瀬館は約60年間、ダイビング客に愛され続け大瀬崎を盛り上げてきました。ただ、同社は後継者問題もあり事業の存続という課題を抱えていました。
こうした状況を目の当たりにし、地域の魅力や価値が失われてしまうことへの危機感を強く抱きました。だからこそ、私たちがこの場所を受け継ぎ、新たな形で未来へつないでいく必要があると考えたのです。
私たちは、この素晴らしい海洋資源を守りながら、この地域をこれからも活気のあるダイビングエリアにしたいと考えています。

画像3 大瀬崎から望む富士山
画像出典: ネイチャーイン大瀬館 セキュリティトークン債特設ページ https://natureinn.jp/osekanmirai/
ネイチャーイン大瀬館 公式サイト https://natureinn.jp/
銀行融資でもクラウドファンディングでもなく、自己募集型デジタル社債を選んだ理由
Q. 今回、資金調達の手段として「自己募集型デジタル社債」を選ばれた理由は何でしょうか?
目的は設備投資だけではなく、「お客様の体験価値を高めるため」という目的を明確にしたかったからです。
銀行融資という選択肢もありましたし、親会社のレーサムから借りることもできました。ただ、それよりも「何のために資金を使うのか」をお客様にきちんと伝えたかった。そこで、応援型の性質を持つ社債がフィットすると感じました。
また、もともとセキュリティトークンに挑戦したいという思いもあった他、デジタル社債は少額から安定的に利息を得ながら優待も楽しめる、投資初心者の方にとってちょうどよい商品だと感じていました。幅広い世代の方に大瀬崎の魅力を伝えたいという思いもあり、自己募集型デジタル社債に挑戦することにしました。
Q:エクイティ型の投資という選択肢もありましたか?
検討はしましたが、「権利の譲渡がしにくい」「資金使途が不動産などに限定されやすい」という制約がネックでした。社債であれば、調達した資金を施設だけでなく地域や周辺環境など、事業全体に還元できる。資金使途の柔軟性が大きな決め手となりました。

出典: ネイチャーイン大瀬館 セキュリティトークン債特設ページ https://natureinn.jp/osekanmirai
OwnerShip社債版を選んだ理由
Q.デジタル社債発行にあたり、OwnerShip社債版を選んだ決め手は何ですか?
最初は他社サービスとも比較しましたが、コストが非常に高かったり、「このアセットには提供できない」と言われたりもしました。そんな中で、アイデアに共感してくれたのがOwnerShipでした。
OwnerShip社債版は、「投資家walletを含め必要な機能がすべて揃っていること」や「書面交付や償還処理に至るまですべてのプロセスが自動化されていること」が非常に魅力的でした。

OwnerShip社債版 発行体向け管理画面
Q:システム面での不安はありませんでしたか?
社内にシステムの知見がほとんどない状態だったので大変でしたが、困ったら丁寧に教えていただけたので、非常に頼りになりました。レスポンスも早く「分からないことはすぐ聞ける」という安心感が、最後までやり切れた大きな要因だったといいます。
発行準備と結果―2回目は募集額の2倍を超える申し込み。ファンの力を再確認
Q.発行準備から募集開始までの流れについて、率直なご感想を教えてください
正直に言うと、かなり大変でした。
システムの使い方に慣れるのに時間がかかったことに加え、親会社であるレーサムの事業は、富裕層向けに物件を販売することなので、今回ターゲットとなる一般投資家の感覚も、正直ほとんど分からなかった。金額設定や利回りも、最初は手探りです。結果的に、50万円・100万円で申し込まれる方が多く、「選択肢を用意すること」の重要性はやってみて初めて分かりました。
Q:実際に募集を行ってみて、どのような手ごたえを感じましたか?
1回目は正直、不安も大きく、準備不足だったと思います。
一方で2回目は、SNSでの告知や現地にポスターを貼り周知するなど、事前準備をしっかり行いました。中でも一番効果的だったのは、現地での告知です。宿泊券やダイビング関連の特典など、実際に利用する方にとってメリットのある内容だったため、常連のお客様やダイビングショップの方から大きな反響をいただきました。
結果として、募集額1,000万円に対し2,000万円以上の申し込みがあり、「準備をすれば、想いはきちんと伝わる」という確かな手ごたえを得ることができました。特典に魅力を感じてくださったお客様の来訪頻度を高める効果も生んでいます。
Q:調達した資金は、どのように活用されていますか?
調達した資金は、すべてお客様の利便性向上に使っています。具体的には、ダイビング機材を運ぶ車両の大型化、防犯強化、無料で使えるランドリールームの新設などです。これらの設備が実際に使われている様子を見るたびに、投資してくださった皆様への感謝と、成果を実感しています。

画像4:宿泊者が無料で使えるランドリールーム(提供写真)
これから検討する企業へのメッセージ―「利回り」以上の価値を生むのは、自社への愛と共感
Q:最後に、デジタル社債の導入を検討している企業へアドバイスをお願いします。
社債というと上場企業が発行しているイメージが強いですが、自己募集型デジタル社債は、これまでの社債と異なり幅広いニーズに答えうる金融スキームの一つだと思います。
特に、自社のアセットやサービスに本当に魅力がある会社、顧客と向き合って事業をしているBtoC企業には、非常に相性がいいと思います。
実際、投資家様の多くは常連のお客様で、「この場所が好き」「応援したい」という気持ちで参加されています。親会社の保証よりも、商品や体験そのものの魅力が評価されていると感じています。
利回りだけで人は動きません。「応援したい」「好きだから」という気持ちが原動力になります。
自社の顧客に誠実に向き合い、共感される商品やサービスを正面から伝えられる会社であれば、これほど相性の良い仕組みはないと思います。自社のファンを増やし、共に事業を成長させていきたいと願うなら、ぜひ挑戦していただきたいと思います。
本事例について詳しく知りたい方へ
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