はじめに|系統用蓄電池の資金調達はビジネスモデルで決まる
系統用蓄電池ビジネスの検討が進む中で、「なぜ資金調達が難しいのか」「金融機関はどこを見て判断しているのか」といった疑問を持つ事業者は少なくありません。
系統用蓄電池(BESS)は、同規模の太陽光発電と比べて初期投資額が大きく、FIT(固定価格買取制度)のような固定収入が前提となる事業とは異なり、電力市場取引の運用次第で収益が大きく変わるという特性があります。そのため、金融機関にとって将来の収益性を評価しづらい分野とされてきました。
本記事では、系統用蓄電池の資金調達において重要となるビジネスモデルの考え方を整理し、金融機関が事業性を評価する視点を解説します。
なぜ系統用蓄電池は資金調達が難しいのか?
系統用蓄電池ビジネスでは、事業者側と金融機関側の双方に、資金調達を難しくする要因があります。事業者側で多いのは、電力市場取引や蓄電池ビジネス全体の理解が十分でないまま、金融機関との協議に進んでしまうケースです。
いざ金融機関に持ち込んでも、電力市場取引や蓄電池システムに関する知識不足があり、結果として融資に結びつかないケースも多く、資金調達の難易度が伺えます。
下は現場で実際にあった事例です。
不動産事業者
金融機関から中長期的な電力市場の見立てについて質問されたが、アグリゲーターからもらった収支シミュレーション以上のことが分からず、結果として融資に繋がらなかった。
物流会社
パッケージ型案件を金融機関へ持ち込んだが、事業そのものの理解が浅かった為、金融機関から事業リスクを評価するように求められた際に自分たちで解決できなかった。
一方、金融機関が懸念しているのは、制度の不確実性と収益の変動です。
金融機関
系統用蓄電池ビジネスはまだ導入期であり、制度や仕組みはまだ完全に確立されていないので、融資の判断は慎重にせざるを得ない。
金融機関
収支計画の結果は、前提条件次第で大きく変わる。この状態ではプロジェクトファイナンスではなくコーポレートファイナンスに依拠するしかない。
系統用蓄電池は、卸電力市場・需給調整市場・容量市場といった複数の市場を組み合わせて収益を得るため、市場価格や制度変更の影響を受けやすく、収益にブレが生じやすい事業と見られています。
その結果、事業単体の収益性を前提とするプロジェクトファイナンスは慎重になりやすく、ビジネスモデルの設計次第で資金調達の可否が分かれるのが実情です。
▼3つの電力市場についての詳しい解説はこちら▼
金融機関は系統用蓄電池のビジネスモデルをどう評価しているのか
金融機関が系統用蓄電池を評価する際に見ているポイントは、大きく次の3点です。
ー 収益の予見性(どの程度ブレるのか)
ー 収益変動リスクを事業者が負えるのか
ー 運用体制が長期にわたり機能するか
これらをどう設計しているかによって、同じ蓄電池設備でも評価は大きく変わります。
この設計の違いが、ビジネスモデルの違いとして現れます。
資金調達の考え方から見るビジネスモデルの違い
系統用蓄電池ビジネスのビジネスモデルは大きく、「市場取引型(マーチャントモデル)」と「契約型(コントラクトモデル)」の2つに分けることができます。
この違いは、収益の安定性だけでなく、資金調達における金融機関の評価にも大きく影響します。
資金調達の観点から見た、系統用蓄電池(BESS)のビジネスモデル比較 ▼
| 項目 | 市場取引型(マーチャントモデル) | 契約型(コントラクトモデル) |
|---|---|---|
| 収益源 | 卸電力市場/需給調整市場 など | 長期契約・制度収入 |
| 収益特性 | 市場価格に連動(変動大) | 一定程度固定化 |
| 金融機関の見方 | 収益の予見性が低い | 返済原資を評価しやすい |
| 資金調達の論点 | シナリオ設計・下振れ耐性・運用体制 | 契約の継続性・相手方の信用力 |
01 | 市場取引型(マーチャント型)ビジネスモデルと資金調達の考え方
市場取引型のビジネスモデルは、卸電力市場や需給調整市場での取引収益を主な返済原資とします。
収益の上振れ余地がある一方で、市場価格変動の影響を直接受けるため、金融機関から見ると収益の予見性は低くなりがちです。
そのため金融機関は、
ー 複数の収益シナリオ
ー 下振れ時の耐性
ー 運用を担うアグリゲーターの実績・体制
を詳細に確認します。「市場で稼げる」という説明だけでは、資金調達にはつながりません。
02 | 契約型(コントラクト型)ビジネスモデルと金融機関評価
一方、契約型のビジネスモデルは、長期契約などによって収益を一定程度固定化する設計です。
金融機関から見ると返済原資の見通しが立てやすく、プロジェクトファイナンスと相性が良いモデルとされますが、実際の評価では、契約内容に加えて「誰がどのように運用するのか」まで含めて判断されます。
契約型には、
ー 制度を活用するモデル(長期脱炭素電源オークション※を活用)
ー 民間契約に基づくモデル(トーリングモデル)
がありますが、共通して重要なのは、「契約があること」そのものではなく、その契約を支える運用体制が長期にわたり機能する確からしさという点です。
※コントラクト型ビジネスモデルの中核となる「長期脱炭素電源オークション」について以下の記事で詳しく解説しています。
▼系統用蓄電池の収益安定化に必要な容量市場とは▼
なお、ここまで述べたとおり、制度型・商業契約型いずれのコントラクトモデルにおいても、金融機関が重視するのは、制度や契約そのものだけではありません。
実際には、蓄電池の運用を担うアグリゲーターが、長期にわたり安定した運用を継続できる体制を備えているかどうかが、事業評価の重要な判断材料となります。
また、商業契約型の代表例であるトーリングモデルでは、蓄電所の「所有」と「運用」を分け、運用者(オフテーカー)が所有者に「Toll(トール)」と呼ばれる利用料を長期的に支払うことで、所有者側の収益を安定化させます。
商業契約型コントラクトモデル(トーリングモデル)における所有・運用・資金の関係図 ▼

このモデルにおいても、金融機関が重視するのは契約そのものではなく、オフテーカーが長期にわたり安定した運用を継続できるかどうかです。オフテーカーの信用力や市場運用の実績は、トーリングモデルにおける資金調達の成否を左右する重要な評価ポイントとなります。
資金調達の観点で整理する、系統用蓄電池ビジネスモデルの本質
系統用蓄電池ビジネスにおいて、金融機関が直面している課題は、「制度が変わるかどうか」や「市場価格が変動するかどうか」そのものではありません。本質的に問われているのは、その不確実性を前提として、事業としてどのように整理し、説明できているかという点です。
具体的には、金融機関は次のような観点でビジネスモデルを見ています。
ー どのリスクを、誰が負担する設計になっているのか
ー そのリスクは、契約や制度によってどこまでコントロールされているのか
ー 最終的に、返済原資はどの収益から生まれるのか
マーチャントモデルか、コントラクトモデルかという分類は、あくまで「収益とリスクをどう整理しているか」を理解するための入口に過ぎません。重要なのは、そのモデルが資金調達の観点で説明可能な構造になっているかどうかです。
こうした視点で見ると、系統用蓄電池における資金調達の成否は、制度や市場環境以上に、ビジネスモデルの設計力によって左右されていることが分かります。
まとめ|資金調達を見据えたビジネスモデル設計が重要
系統用蓄電池ビジネスへの参入を検討する事業者にとって、目先の収益だけにとらわれず、ビジネス全体の構造やリスクを正しく理解することが何より重要です。ビジネスモデルと向き合い、リスクとリターンの関係を自ら説明できるかどうかが、蓄電池事業者としての競争力を左右します。
設備や用地の検討に入る前に、資金調達の観点から「どのようなビジネスモデルを描くのか」を整理しておくことが、事業化の確度を大きく高めることにつながります。
金融機関と同じ視点に立ち、事業性を説明できるビジネスモデルを構築できるかどうか。
それこそが、系統用蓄電池事業の成否を分ける最も重要なポイントと言えるでしょう。
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