今、なぜ系統用蓄電池ビジネスが注目されているのか
2050年カーボンニュートラル実現を目指す中で、再生可能エネルギーの導入が急拡大しています。その一方で、太陽光や風力は発電量の変動が大きく、電力系統の安定性を保つための「調整力」が不可欠です。
こうした背景から、「系統用蓄電池」に注目が集まっています。制度改正や補助金の後押しもあり、今まさに新規参入のチャンスが広がっているのです。
系統用蓄電池の仕組みと基本的なビジネスモデル
系統用蓄電池は、電力系統に直接つながり、電気を「ためる」ことができるインフラです。単なる蓄電設備ではなく、複数の電力市場を活用して収益を得ることができる新たな電力ビジネスモデルが確立されつつあります。
このビジネスでは、電気を充電・放電するタイミングや準備状態に応じて、異なる種類の報酬が得られる仕組みになっており、主に以下の3つの市場を組み合わせて活用します:
- 需給調整市場
- 卸電力市場
- 容量市場
これらの市場を適切に組み合わせ、戦略的に運用することで、系統用蓄電池による収益化が可能になります。
では、系統用蓄電池ビジネスを構成するこれら3つの市場について、それぞれの仕組みと特徴を順に見ていきましょう。
系統用蓄電池ビジネスを支える3つの電力市場
ビジネスとして成立させるには、以下の3つの市場を組み合わせることが鍵です。
需給調整市場
- 「ΔkW収入」*:充電状態で待機すること自体への対価
- 「kWh収入」*:実際に放電することへの対価
調整力として系統を安定化させる役割を担い、最も安定的かつ収益性の高い市場です。
応札や運用の仕組みは複雑ですが、しっかり準備すれば大きな柱になります。
*ΔkW価値(デルタキロワット価値)とは?
蓄電池が「いつでも放電できる準備状態」にあることに対して支払われる報酬です。実際に電気を使わなくても、電力系統の安定に貢献する「調整力の待機」としての価値があるとみなされ、需給調整市場で対価が得られます。
*kWh価値(キロワットアワー価値)とは?
実際に電力系統へ電気を供給したときに支払われる報酬です。需給バランスの崩れに対応して、送配電事業者からの発動指令に基づき蓄電池が放電することで、供給量が増え、系統が安定します。その貢献に対して得られる対価です。
② 卸電力市場(JEPX)
- 安い電力を蓄えて、高い時間に売ることで収益を確保
- アービトラージが可能で、電力価格の動向分析力が求められる
③ 容量市場
- 系統に電源を「将来確保しておく」ことへの対価
- 収益は年単位、4年後の運転を見越してオークションで単価が決まる
- 10MW以上の設備であれば、20年間の固定収入が得られる「長期脱炭素電源オークション」に参加可能
なお、複数案件を合算して応札する場合は、1件あたり30MW以上の容量が必要

参入を検討する方へのアドバイス
どんな企業が向いている?
- 電力需給管理や電気工事に知見がある企業
- 遊休地を有効活用したい企業
- 再エネ領域での技術資産を持つ企業

参入時のポイント
- 複数市場の知識と運用体制が必要(特に需給調整市場の理解が重要)
- 人材・運用スキルの確保と育成
- 蓄電池の劣化やメンテナンスリスクへの備え
- 補助金・自治体制度を活用した初期投資の軽減
▼▼ 【参考】参入プレイヤーの分類と課題について詳しく知りたい人はこちら
今後の市場見通しと収益機会
政府の再エネ導入目標からすると、2040年時点で5,000万kW以上の系統用蓄電池が必要になると見込まれていますが、2024年9月末時点で接続契約に至っているのはわずか約600万kWにとどまります。
さらに接続契約から実運用までには数年のタイムラグがあるため、実際に稼働している案件はまだ限られているのが現状です。これは裏を返せば、まだまだ未開拓のホワイトスペースが存在することを意味しており、まさに「成長産業」としてのポテンシャルが高いことを示しています。
制度整備や市場環境が急速に進む中で、電気事業に関わってこなかった企業にとっても新規参入のチャンスが広がっています。
まとめ|電力ビジネスの新しい選択肢としての系統用蓄電池
- 系統用蓄電池は「電気を使わずに、稼ぐ」新しい電力ビジネス
- 3つの市場を理解・活用することで、安定収益も見込める
- これからの脱炭素社会に不可欠なインフラとして、導入の後押しも豊富
今が始めどきのチャンスです。まずは情報収集から一歩を踏み出しましょう。
系統用蓄電池ビジネスの詳細については、以下のサービス紹介ページをご覧ください。
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