再生可能エネルギーの主力電源化に向けて、系統用蓄電池ビジネスの活用が加速しています。しかし実際に導入を検討すると、「初期コストが高い」「初期コストの見積もりが難しい」「設置工事費や工事費負担金の不確実性が大きい」などの課題に直面する事業者が少なくありません。
本記事では、電力・エネルギー業界はもちろん、不動産、建設、自治体、物流、金融などの事業者が知っておくべき、系統用蓄電池の初期コストの内訳と工事費の構造、そして具体的な削減策をわかりやすく解説します。
1.初期コストの内訳と平均的な構成
系統用蓄電池の初期コスト(CAPEX)は、大きく分けて以下の要素で構成されます。

図1 初期コストの構成(CAPEX)(出所:著者作成)
※筆者が関与した2MW未満の高圧案件の初期コスト構成比。土地代は案件により大きく異なるため、ここには含まない。
上記コストに加え、蓄電池の運用を内製化する場合はシステム導入費が加わる。特別高圧の場合、設置工事費用、工事費負担金の比率が大きくなる場合がある
費用項目 | 概要 | 割合目安 |
---|---|---|
蓄電池システム費用 | 蓄電池・PCS・制御装置・コンテナなど | 約55〜65% |
設置工事費用 | 土地造成・基礎工事・電気工事など | 約15〜20% |
専用線敷設費用 | 発動指令用の専用線敷設費・または簡易指令システム | 約10〜15% |
工事費負担金 | 一般送配電事業者による系統接続工事費 | 約2〜14% |
特に「蓄電池システム費用」と「設置工事費用」が大きな割合を占めます。次項では、工事に関連する3つの費用項目について詳しく見ていきます。
2.工事に関する費用は大きく3種類。初心者でも押さえたいポイント
蓄電池を現地に設置して電力系統に接続するには、次の3種類の工事費用が発生します。
1. 設置工事費用
これは、用地の土木造成や基礎工事、蓄電池の電気工事、受変電・配線など一連の据付工事にかかる費用です。
蓄電池メーカーは一般的に「製品の納品」までを担い、基本的に現地での据付(車上渡しからの荷下ろし)は施工会社の対応となります。土地条件や施工の難易度によって費用は大きく変動します。
2. 工事費負担金
蓄電池を電力系統に接続する際に必要な、一般送配電事業者による設備工事費です。費用は、立地条件(鉄塔からの距離など)や必要な工事内容により大きく異なり、接続検討(1件あたり約20万円)を経て金額が確定します。
3. 専用線敷設費用
蓄電池を電力市場で活用するには、一般送配電事業者からの指令を受け取るための専用線を敷設する必要があるケースがあります。
商品によっては簡易指令システムを活用することで専用線が不要な場合もあり、一次調整力や二次調整力を扱う場合には専用線が必要となるのが一般的です。
3.初期費用を抑える3つの具体策
1. 工事の内製化によるコスト圧縮
太陽光発電などでEPC経験を持つ企業であれば、設置工事を社内対応(内製化)することで、外注費・人件費を抑えることができます。
蓄電池の設置は太陽光に比べて省スペース・短期間で対応可能なため、工数面でも大きな優位性があります。
2. 適地選定で設置工事費・工事負担金を最小化
工事費負担金を抑える最大のポイントは、「系統に近い土地を選ぶこと」です。
また、造成が不要な平坦地や工業地域などを選ぶことで、設置工事費そのものの削減にもつながります。
最近では、一般送配電事業者が敷地を貸し出す公募案件や、用地選定~工事~運用までを一括で支援するアグリゲーターによるサービスも登場していますが、その分コストが高く、管理・運用の長期契約が求められることもあるので、注意が必要です。
3. 製品選定の工夫と比較
蓄電池の価格はメーカーごとに異なります。CATL、BYDなどの大手メーカーは価格競争力が高く、一定の品質・サポート体制を備えているケースが多いです。
とはいえ、メンテナンス対応や運用支援の有無なども含め、価格だけでなくトータルでの比較検討が不可欠です。
4.補助金制度も活用可能。ただし設計の主軸は「投資回収性」
2025年度より、国の補助金制度が拡充され、10MW以上の大型案件で補助上限40億円、LDES技術には最大3分の2の補助率が適用されるなど、導入のハードルが下がっています。
ただし補助金はあくまで「追い風」に過ぎません。導入計画の段階から、投資回収のシミュレーションを設計し、コストの最適化を図ることが何より重要です。
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