需給調整市場とは?──同時同量を支える重要な仕組み
電力は「発電量」と「使用量」が常に一致していなければなりません。これを同時同量と呼び、これが崩れると周波数が乱れて停電などのリスクが発生します。そのズレを瞬時に調整するために存在するのが「需給調整市場」です。
この市場では、一般送配電事業者が蓄電池などの調整力を持つ事業者から「電力を調整する力(調整力)」を調達します。市場は2021年度に開場し、運営は電力需給調整力取引所(EPRX:Electric Power Reserve eXchange)が担っています。
調整力のコストは最終的に託送料金として需要家が負担しますが、蓄電池のような迅速な応答が可能な設備は調整力として非常に価値があり、事業者の新たな収益源となる可能性を秘めています。
5つの商品──応動時間の違いで分かれる
需給調整市場では、以下の5つの商品が取引対象となっています。
商品名 | 応動時間 | 継続時間 | 特徴 |
---|---|---|---|
三次調整力② | 60分以内※1 | 30分※4 | 最初に取引開始された商品(2021年度) |
三次調整力① | 15分以内 | 3時間※3 | 2022年度から取引開始 |
二次調整力② | 5分以内 | 30分以上※3 | 2024年から取引開始 |
二次調整力① | 5分以内 | 30分以上※3 | 同上 |
一次調整力 | 10秒以内※2 | 5分以上※2 | 最も短い応動時間 |
※1 2024年度までは45分
※2 2025年度よりオフライン監視の場合は、応動時間30秒以内、継続時間「設定なし」に変更
※3 2026年度より30分に変更
※4 2024年度までは3時間
出典:EPRX「電力予備力取引の概要」(p.11)を基に作成
応動時間(※)が短いほど迅速な対応が求められ、他の電源に比べ応答速度の速い蓄電池と親和性が高いといえるでしょう
応動時間とは
一般配送電事業者から発動指令が来てから放電するまでの制限時間のこと
系統用蓄電池の取引フロー──入札から発動までの仕組み
調整力を提供するには、事業者がまず事業者がまず需給調整市場における公募情報を確認し、商品とブロック(時間帯)を選んで入札を行います。入札は、商品によって1週間前または前日に行われ、約定すると「予約」状態となります。
実際に調整が必要となると、一般送配電事業者から発動指令が出され、それに対して事業者は指定された応動時間内に放電(供給)を開始します。発動指令に対応できなかった場合はペナルティが発生するため、常に放電可能な状態を維持する必要があります。
発動されなかった電力は、JEPX(日本卸電力取引所)で売電するか、そのまま蓄電状態を保ち、次の指令を待つ形となります。
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今後の可能性と運用ポイント
再エネ導入の拡大や電力供給の不安定化を背景に、系統用蓄電池の必要性は今後さらに高まると予想されます。特に、夏季の猛暑や冬季の寒波など、需給バランスが大きく崩れるタイミングでの発動指令が増加する傾向にあるため、迅速に対応できる事業者の価値は上がっていくでしょう。
収益最大化を目指すためには、以下のような運用が重要です。
- 応動時間に応じた機器の最適化
- 蓄電システムの運用データによる評価・改善
- 市場価格の動向分析と応札戦略の調整
需給調整市場の動きは日々変化しており、正確な情報収集と継続的な戦略見直しが、系統用蓄電池事業の成功には不可欠です。
まとめ
系統用蓄電池は、電力の安定供給に貢献すると同時に、新たな収益性をもたらす事業領域です。需給調整市場の理解と適切な運用戦略により、エネルギー・不動産・金融業界など多様なプレイヤーが参入できる可能性があります。
今後は、市場価格の動向や制度改正、設備の進化を見据えた柔軟な対応が求められます。導入を検討中の方は、ぜひ市場環境を継続的にウォッチし、系統用蓄電池事業の可能性を探ってみてはいかがでしょうか。
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