系統用蓄電池を導入する上では、初期コストだけでなく、運用開始後に発生する維持コストや予期せぬ追加コストまでを正確に把握しておくことが重要です。
本記事では、導入後にかかる維持コストの内訳と削減ポイントを中心に解説しますが、導入前の費用構造をあらかじめ知っておきたい方は、以下の記事をご覧ください。
▼導入費用の内訳から読みたい方はこちら▼
1.維持コストの構成と特徴
蓄電池導入後の維持コストは、電力調達費用とメンテナンス費用が大部分を占めます。
図1は、著者が関与した2MW未満の高圧案件における維持コストの構成比です。

- 電力調達費用
30〜55% - メンテナンス費用
15〜25% - その他
運用委託費用、システム維持費、人件費など
電力調達費用は、日本卸電力取引所(JEPX)などから充電電力を購入する費用。
メンテナンス費用は、定期点検、駆けつけ対応、法定点検(電気主任技術者)などを含みます。
2.見落とされがちなメンテナンス費用の落とし穴
意外にも多くの事業者が、導入段階でメンテナンス費用の見積もりを軽視しています。
以下は現場で実際にあった事例です。
専門商社
価格重視で海外製の蓄電池を導入したが、国内対応のメンテ事業者が少なく、相場より高い費用で委託せざるを得なかった
エネルギー会社
初期費用に気を取られ、メンテナンス費を確認せずに導入。後からオプション追加となり、結果的に想定より高額になった
蓄電池メーカーやメンテ事業者によって、点検項目や頻度、緊急対応の有無が大きく異なるため、初期段階での比較検討が欠かせません。
3.意外な盲点となる騒音問題
蓄電池の特性上、コンテナ内に設置された空調設備が常時稼働し、想定以上の騒音が発生することがあります。
EPC事業者
近隣住民からのクレームで急遽防音壁を設置。予想外のコスト増となった。
新電力
規制値をクリアしていても、“気になる”との声で追加対策を迫られた。
このような騒音リスクを回避するには、以下のような土地選定が有効です。
- 工業地域など騒音規制が緩やかな場所
- 敷地面積が広く、蓄電池と敷地境界との距離を取れる用地
4.設置工事費と工事費負担金を抑えるには?
初期コストの大半を占める設置工事費と工事費負担金は、以下の工夫で削減が可能です。
01 | 設置工事の内製化

- 太陽光発電のEPC(設計・調達・建設)実績を持つ企業であれば、設置工事を社内で対応することで外注費や人件費を抑えることができます。
- 蓄電池は太陽光に比べ小面積・短期間で対応でき、工数・コストの両面で内製化のメリットが大きいとされています。
02 | 工事費負担金の低減

工事費負担金は、電力系統への接続に必要な工事費であり、送電線や鉄塔からの距離、設備内容によって金額が大きく変動します。
削減のための具体的対策として、次のような方法が紹介されています:
- 鉄塔から近い適地を選ぶ
- 一般送配電事業者が実施する土地貸与の公募(例:変電所構内)を活用する
これらにより、接続設備工事の負担軽減が期待できます。
5.SPC(特別目的会社)によるリスクとコストの分散
複数事業者が共同でSPCを設立することで、次のような効果が得られます。

- イニシャルコストの分散
- 長期運用リスクの低減
- 複数地点への展開が可能に
建設コンサル会社
SPCを設立し、複数の企業で共同出資・運営することで、資金面だけでなく、開発・運用面の役割分担も明確になり、事業推進がスムーズに進んだ
6.まとめ 補助金の有無にかかわらず「自助努力」がカギ
補助金の公募は確かに追い風ですが、それに頼るだけではビジネスとして持続しません。
重要なのは、初期・維持両面のコスト構造を正しく把握し、主体的に削減策を講じることです。
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