系統用蓄電池事業に関心はあるものの、どこから手を付ければよいか分からない——。
異業種から新規参入を検討している企業からは、
「着手すべき順番が分からない」「運用のイメージが湧かない」
といった声が多く寄せられています。
また、電力業界の経験がある企業であっても、
「アグリゲーターの選定基準が分からない」「蓄電池システムの評価が難しい」
など、系統用ならではのプロセスで悩むケースは少なくありません。
本記事では、こうした課題を抱える事業者に向けて、系統用蓄電池ビジネスの立ち上げを成功させるための3ステップを、実務目線でわかりやすく解説します。
1.蓄電池ビジネスの立ち上げは3ステップ
系統用蓄電池事業は、以下の3つのステップで構築していきます。
ステップ | 内容 |
---|---|
① プランニング | 用地・スキーム・収益性評価など、参入可否を判断するための計画策定 |
② 導入準備 | ベンダー(蓄電池・EPC・アグリゲーター)選定、各種申請の実行 |
③ 導入 | 工事着手および運用体制(O&M)構築 |




ステップ1 プランニング
▶用地選定・スキーム検討・収益性評価
01 | 用地選定
用地選定は、系統空き容量・騒音規制・鉄塔からの距離など複数の条件を満たす必要があり、事業性に直結する最初のハードルです。
詳細は別記事で解説予定のため、この記事では割愛しますが、探索と評価のノウハウ次第で、初期コストや運用効率が大きく変わる領域です。
02 | スキーム検討
自社単独ではなく、SPC(特別目的会社)を組成し、複数社と共同で推進するケースも。出資構成やAM(アセットマネジメント)体制を明確にする必要があります。
03|収益性評価
系統用蓄電池ビジネスにおける意思決定の要。
自社運用の場合は収益計画を自ら作成し、第三者からの意見を得ることで精度を高めましょう。
アグリゲーターに委託する場合は、売電収入の算出根拠や前提となる市場取引、リスク加味の妥当性を確認します。

利益保証は原則ないため、複数アグリゲーターの収益計画を比較し、事業者自らが判断責任を持つことが大前提です。
ステップ2 導入準備
▷実行フェーズに向けた準備
以下のベンダーを選定し、事業の骨格を固めていきます。
ー 蓄電池システムの選定
ー EPC・メンテナンス事業者の選定
ー アグリゲーターの選定
▷各種申請の分類と内容
申請カテゴリ | 内容例 |
---|---|
電気事業関連 | OCCTO加入、経済産業省への届出、マスタ登録など |
系統利用関連 | 発電量調整供給契約(発電側)/接続供給契約(小売側) |
市場取引関連 | JEPX、需給調整市場などの会員・参加登録 |

特に需給調整市場への参加には蓄電池の性能審査が必要。書類審査だけでなく実働試験を要する場合もあるため、想定以上に時間がかかるケースがあります。
ステップ3 導入(工事・運用体制の整備)
▷必要な工事は3種類
工事種別 | 内容 |
---|---|
設置工事 | 蓄電池本体や関連設備の設置 |
系統連携工事 | 電力系統との接続工事 |
専用線敷設工事 | 発動指令用の通信回線設置(※商品により不要な場合あり) |

工事費用の抑制は、初期コスト(CAPEX)を左右する大きなポイントです。
特に、専用線工事の有無や、系統連携にかかる費用は、用地条件や地域によって大きく異なります。
これらの費用構造について、さらに詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
▼蓄電池の初期コスト・工事費について読みたい方はこちら▼
▷O&M体制を完工前に構築する
運用開始後の体制も、工事期間中から整備しておくことが重要です。
運用形態 | 検討ポイント |
---|---|
自社運用 | 現場での役割分担、アラート対応、監視方法 |
外部委託 | アグリゲーターの報告内容、判断基準、対応フロー |
特に異常アラートの検知や初期対応については、トラブル発生時のリスク軽減に直結するため、事前の運用ルール整備が必須です。
【実践に役立つ3カ条】立ち上げを成功させるためのリアルな知見
系統用蓄電池ビジネスは、多くの事業者にとって未知の領域です。筆者が複数の支援実績から得た、現場で本当に役立つ3つの実践ポイントをご紹介します。
第1条|用地選定は、何よりも先に着手を
用地は「探索」に時間がかかり、「評価」にノウハウが必要です。意思決定前に候補地を押さえられるかどうかが、プロジェクト全体の成否を左右します。
近隣住民の反対で再選定に…
再エネデベロッパー
もっと早く説明しておくべきだった
農振除外に1年以上…
太陽光事業者
想定より困難で計画が頓挫しました
第2条|補助金申請は“解像度高め”の事業計画で
補助金は追い風ですが、通過には実現性の高い計画が求められます。蓄電池システムやEPC事業者、アグリゲーター選定が曖昧なままでは、申請の土俵にも立てません。補助金へ申請する場合、想定される公募開始時期から逆算して、余裕をもって準備することをおすすめします。
事業検討の開始が遅く、納得のいく事業計画を作りきれないまま補助事業への申請をしてしまった。当然ながら採択されなかったが、申請書を準備する中で詰めきれていない部分が明らかになったので、その後の検討に役立った。
建設会社
第3条|収益計画は“3回”見直す
1回つくって終わりではないのが収益計画。以下の3つのタイミングで見直すことが必須です。
収益計画を見直すタイミング
- 事業計画段階:仮定を置いた収支試算
- 選定完了後:実際の蓄電池・EPC・アグリゲーター情報でアップデート
- 運用開始後:実績を基に再検証し、改善を加える
アグリゲーターが提示した想定を信じすぎた…今更変えるのは大変
金融機関
売電収入の変動は想定外だった。もっと細かく見ておくべきだった
エネルギー会社
まとめ|立ち上げ成功のカギは“全体像”と“実務対応”の両立
本記事のまとめ
― 系統用蓄電池の立ち上げは「プランニング」「導入準備」「導入」の3ステップで整理可能
― アグリゲーター選定や運用体制の整備が、事業の成功を左右する重要ポイント
ー 工事・申請の対応だけでなく、O&Mや補助金対応も初期段階から計画的に進めましょう
系統用蓄電池ビジネスのお悩みはGrowShipにご相談ください
グローシップは、系統用蓄電池ビジネスの黎明期から30社以上の蓄電所オーナー様を支援してきました。
プランニングから導入・運用まで一貫したコンサルティングを提供し、制度対応や資金調達スキームの設計も含め、事業化を総合的にサポートします。
ご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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