系統用蓄電池の補助金、2024年度の採択結果は?経済産業省の方針と市場の変化

2024年度の採択結果の概要

本補助事業は、再生可能エネルギーの導入を促進するため、系統用蓄電池や水電解装置の導入を支援するものです。2024年度は、過去3年間の補助金総額を上回る規模となり、応募者が殺到しました。

採択数27件
採択総額約346億円
最大採択金額約33.5億円(ユーラスエナジーホールディングス)
1件当たりの平均採択金額約12.8億円

特に北海道と九州の採択件数が多く、日本の電力需給の調整が求められる地域であることが改めて示されました。

採択案件の傾向

地域別の傾向

2024年度も、採択案件の半数以上が北海道(9件)と九州(6件)に集中しました。

なぜこの2地域に集中するのか?

北海道九州
風力発電のポテンシャルが高いが、電力需要が小さく、本州への送電容量にも制約があるため、蓄電池の活用が重要太陽光発電の導入量が多く、出力制御の頻度も全国で最も高い

採択金額の推移

採択された案件の1件当たりの金額や最大金額は、年々増加傾向にあります。

平均最大
2021年度9.9億円25億円
2022年度11.6億円25億円
2024年度12.8億円33.5億円

この背景には、補助率や上限額の引き上げがあるほか、事業の大型化が進んでいることが挙げられます。

新規参入者の増加

小売電気事業者のライセンスを持たない事業者の採択件数が増加しました。

ー 2021年度
4件(全13件中)

ー 2024年度
12件(全27件中)

EPC(設計・調達・建設)事業者、不動産会社、金融機関など異業種からの参入が増え、多様なプレーヤーによる市場の活性化が進んでいます。

2024年度の公募要件の変更点

2024年度の公募では、補助金申請に関する重要な変更がいくつかありました。

事業期間の延長

従来、補助対象事業は年度内に完了する必要がありましたが、最大3年間の年度またぎが可能になりました。

ー 人材不足に悩む企業にとって受注のハードルが下がる(建設会社など)

ー 納期の長い設備導入がしやすくなる(EPC事業者など)

補助率・上限額の引き上げ

引き上げ前引き上げ後
新規技術*を活用した蓄電池補助率が2分の1以内3分の2以内に上昇
10MW以上の蓄電池システム上限額が20億円40億円に増額

*6時間以上の長時間充放電が可能なLDES(Long Duration Energy Storage)技術を指す

GX(Green Transformation)要件の追加

本補助事業の予算がGX経済移行債から拠出されることとなり、温室効果ガス排出に関する情報開示が義務化されました。

具体的には、GXリーグ※加入などの要件が追加され、特に海外メーカーへの影響が大きかったと考えられます。

審査項目の変更

新規項目の追加:

1. 省エネ関連情報の開示

2. 再エネ出力制御の多いエリアの評価強化(北海道、東北、中国、四国、九州)

3. 長時間容量対応の蓄電池の評価(6時間以上の充放電が可能な技術を優遇)

削除項目:

「新規事業者の参入促進」(過去に採択されていない事業者への加点)

必須要件に格上げ:

広域認定※取得」(使用済み蓄電池の適正処理を促すため)

これらの変更から、日本政府は国内メーカーや事業基盤の強固な海外メーカーの活用を促進しつつ、長時間充放電が可能な蓄電池の導入を推奨していることが分かります。

補助金活用のポイント

補助金を活用することは有効な手段ですが、それに依存しすぎることは避けるべきです。

point

補助金がなくても成立する
ビジネスモデルを構築

公募時期を待たずに
柔軟に事業を進める

バリューチェーンを拡大し
新しいビジネスチャンスを探る

補助事業はあくまでも選択肢の一つであり、事業の成長を妨げる要因にならないよう注意が必要です。


まとめ

2024年度の系統用蓄電池補助金の採択結果を通じて、市場環境の変化や公募要件のトレンドが見えてきました。

• 北海道・九州エリアへの集中 → 再エネ導入に伴う調整力強化が必要

• 採択金額の増加 → 事業規模の拡大と市場の成長

• 異業種からの参入増加 → 市場の多様化と競争の激化

• 公募要件の厳格化 → 環境負荷軽減・国内メーカーの優遇・長時間充放電技術の推奨

今後も、系統用蓄電池市場は拡大し続けると予想されます。補助金を上手に活用しつつ、長期的な視点で事業戦略を立てていくことが重要です。


系統用蓄電池ビジネスの詳細については、以下のサービス紹介ページをご覧ください。

【系統用蓄電池サービス詳細はこちら】

系統用蓄電池サービスページはこちら

関連記事

TOP