2024年以降、系統用蓄電池の導入が加速する中、「容量市場」が注目を集めています。
本記事では、容量市場の概要に加えて、「メインオークション」「長期脱炭素電源オークション」2つの制度の違い、収益モデルにおける役割、制度動向などを2025年最新情報で解説します。
容量市場とは?|系統用蓄電池にとっての意義とメリット
容量市場とは、予め必要な供給⼒を確実に確保するため、将来の供給⼒(kW価値)が取引される市場です。
事前のオークションに応札・落札し、求められる期間に“落札した分の供給力を維持する”ことで報酬が得られます。市場はOCCTO(電力広域的運営推進機関)により運営されており、年1回のオークションによって参加電源が選定されます。
系統用蓄電池が容量市場に参加することで、次のようなメリットが得られます:
| 特徴 | 説明 |
|---|---|
| 収益の安定性 | 月単位の固定収入が見込める |
| 運用負荷が小さい | “落札した分の供給⼒を維持する”こと⾃体が報酬の対象となる |
| 金融機関からの評価が高い | 長期収入の裏付けが可能で、バンクアビリティ向上に寄与 |
このように容量市場は、JEPXや需給調整市場のような運用リスクのある市場を補完する「ベース収益」として、系統用蓄電池ビジネスを安定化させる鍵となります。
2つの容量市場:メインオークションと長期脱炭素オークションの違い
容量市場には、「メインオークション」と「長期脱炭素電源オークション」の2種類のオークションが設けられています。どちらも報酬の原資は、小売電気事業者から徴収される「容量拠出金」で構成されており、落札された蓄電池による”供給⼒”の対価として⽀払われます。
それぞれの仕組みを以下に解説します。
| 項目 | メインオークション | 長期脱炭素電源オークション |
|---|---|---|
| 目的 | 4年後の最大需要に対応する供給力の確保 | 脱炭素化を目的とした再エネ・蓄電池導入の加速 |
| 参入要件 | 系統用蓄電池を含む全電源が対象 | 系統用蓄電池など脱炭素電源に限定 出力10MW以上(合算案件は30MW以上) |
| 応札単位 | 設備の1kWあたりの必要維持コスト | 同左 |
| 約定方式 | シングルプライス方式 (落札設備のうち最も高い価格が全体に適用) | 同左 |
| 収益期間 | 入札から4年後の1年間 (毎年入札可能) | 運転開始翌年から原則20年間 |
| 初回実施 | 2020年 | 2024年 |
容量市場に関わる最新の制度動向(2025年7月現在)
2024年度から本格的に運用が始まった長期脱炭素電源オークションでは、初回の約定結果において全体の7割以上が系統用蓄電池による案件となり、蓄電池が次世代電源としての地位を確立しつつあることが明らかになりました。
今後は、制度運用の評価を踏まえたうえで、対象容量の拡大や応札要件の見直しが検討される可能性もあります。これにより、より多様な蓄電池事業者や再エネ電源が参入しやすくなることが期待されています。
なお、2025年7月現在の最新制度情報や応札条件の詳細は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)公式資料「容量市場の概要説明資料(2025年7月版)」でも確認できます。
収益モデルにおける容量市場の位置づけ
容量市場の報酬は1年契約に基づき、毎月分割で支払われるのが一般的です。
そのため、日々の価格変動が大きいJEPXや、発動の有無に左右される需給調整市場と比べて、収益の安定性が高いことが特徴です。
蓄電池のビジネスモデルにおいては、以下のような3本柱の収益設計が主流です。
| 市場区分 | 対象価値 | 特徴 | 収益タイミング |
|---|---|---|---|
| 容量市場 | kW価値(供給力) | 年単位のベース収益 | 毎月(年契約に基づく) |
| 需給調整市場 | ΔkW/kWh価値(準備+実動) | 応動速度に応じた商品への応札 | 日/週単位 |
| 卸電力市場(JEPX) | kWh価値(実動) | 電力価格差によるアービトラージ | 当日/前日単位 |
▼系統用蓄電池ビジネスを支える3つの電力市場の記事はこちら【需給調整・卸電力・容量市場】▼
まとめ|容量市場の理解が、BESSビジネスの安定化につながる
容量市場は、日々の市場価格に左右されない“ベース収益”を確保できる唯一の仕組みです。
特に「メインオークション」と「長期脱炭素電源オークション」の違いや条件を正しく理解することで、長期的な収益計画を安定的に描くことが可能になります。
また、容量市場で得られる収益は、JEPXや需給調整市場のような短期収益と異なり、4年後を見据えた長期契約に基づくため、金融機関からの信頼性評価を高め、融資の獲得や条件交渉を優位に進める材料にもなります。
蓄電池の導入や運用を進めるうえで、こうした市場構造を戦略的に活用できるかどうかが、BESSビジネスの成功を左右するといっても過言ではありません。
本記事のまとめ
― 容量市場は「将来の供給力確保」に対する対価が得られる制度で、長期収入の柱となる
― メインオークションと長期脱炭素電源オークションの2制度があり、参加条件や収益期間が異なる
― 制度改定に柔軟に対応できる準備が事業成功のカギ
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